平成21年壽秋 松尾大屋台新調記念対談「平成の御新造を終えて」
- 饒昇:
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手前味噌になりますが、祭りどころの新居浜や西条の太鼓や屋台と仮にイベントなどで並べても遜色ないものに仕上がったとの自負がございますか?
- 菅:
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あります!ただそれぞれの地域性や屋台の伝統的型式が違いますから、一概に優劣を競うことはできませんがね(笑)。
- 饒昇:
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施主としては菅棟梁にゆだねる段階から、他に追随を許さない豪奢な規模と装飾を持ったものをとの、お考えが当然あったと思いますが、実際問題この松尾を越え得る屋台は将来的に出てくると棟梁は見込まれていますでしょうか?
- 菅:
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今回の斬新なつくりを継承した屋台はどんどんと出てきて欲しいと思いますが、私自身としてはこれだけの規模の大屋台は最後の仕事と思って取り組んだことは事実です。
- 饒昇:
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それくらいの自負を持って作られた自信作ということになりますね。
- 菅:
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そういうことです。
- 饒昇:
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その他棟梁ならではのこだわった箇所といいますか、思い入れといいましょうか、製作エピソードなどお聞かせください。
- 菅:
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今までの風早の屋台というものは、割合と、ざっと造ってきていました。その純朴粗野なつくりが、ダンジリの原型を留めてきたとの意見もあるでしょう。もちろん昨今観光や地域活性化対策として、他にも見せる祭りへと発展を続けていますから、屋台関係者の努力で規格も大型化して装飾も凝っては来ています。しかし、まだまだ豫州新居浜、西条や、讃岐豊浜、播州、摂津、泉州の屋台や太鼓台と比べると、制作費にお金を入れてないんよね。ある程度のお金をかけてやると50年、100年でも、保つ物ができるし、第一、皆が大事にしだす。北条の人はその年のお正月の総会で決まったら、来秋の祭りには早、出せるとおもっとる。
それでは材料もどうしたてえ間に合わせになるし、いわゆる規定品の屋台となり、独創性を出す時間や余地がないんよね。正直ゆうて。やっぱり2年3年かけて案を練って、いろんな人と付き合って、でないとええもんはできんと思う。 今回の松尾さんの平成の御新造が、永遠に残したい風早屋台の技術革新と風早中の氏子の皆さんの意識改革の契機になれば、屋台製作の職人として、これほど冥利に尽きることはないと思っております。
内には6人の30歳に満たない若手の弟子がおりまして、今回の新造に携わらせることができました。めったにない貴重な経験になったと思います。このノウハウや技術をきっと後世に伝えてくれることでしょう。そのような意味からもこうした機会を与えてくださった中西外区・松尾氏子の皆様に感謝を申し上げます。このたびはありがとうございました。
- 饒昇:
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まさしく平成25年御造替になる伊勢の神宮の精神を髣髴とさせるような、良いお話をいただきました。
お祭りデビューが今からワクワクしてきましたね。私も今回のお話をベースにしっかりと、屋台のアピール、宮出しの実況中継に取り組んで参ります。今晩はお忙しい中、皆様ありがとうございました。