風早物部饒速日王国

松尾大社御神紋:二葉葵 抱き菊の葉に菊 松尾神社御神紋:折敷に縮み三文字

松尾大屋台新調 お披露目放送 全文

松尾大屋台新調 お披露目にて、アナウンスする饒昇

松尾大屋台新調 お披露目に て、アナウンスする饒昇

秋祭りメイン会場で各町屋台約30体が居並ぶ中で、当町新調屋台のお披露目パフォーマンスをさせていただきました。時間の関係で予定していた全てのアナウンス案内ができなかった為、ここに予定稿全文を掲載してご紹介また当日のお礼に代えさせていただきます。

主 催
風早の火事祭り実行委員会
主 管
風早屋台頭取連合会「国津会」
と き
平成21年(西暦2009年)10月11日(日)午前4時
ところ
愛媛県松山市立正岡小学校グラウンド
(風早宮大氏神秋季大祭神迎え屋台統一練り奉祝会場)
実況案内
愛媛県神社庁松山支部北条分会神社総代会理事 松尾神社総代 饒昇

製作の経緯

統一練り開始に先立ちまして、本年度各町頭取会の事前承認によりまして、只今から松尾の新調屋台を皆様に御披露目させていただきます。今回の大祭にあわせて中西外区・松尾が大屋台と子供ダンジリを2体同時に新調いたしました。おめでとうございます。

昨年まで大規模町会であります松尾屋台は担き夫も多く、気揃って旧上区と旧下区2体一対で運行を共にして参りましたが、松尾神社の氏子として「松山市随一の統一屋台製作」を願う自発的な住民の運動が沸き起こり、平成12年には、近い将来とした上で、統一屋台建設の動議が町会年末総会に提出され、満場一致をもって可決されました。以後6年間にわたり町会執行部や屋台運行青壮年団体や愛護班・こども会保護者を中心に検討が重ねられ、平成18年年末総会で、10年来の構想をいよいよ形にしようと遂に機が熟し、統一屋台を製作することが正式に決定されました。

早速、屋台製作委員会が組織され、これまで、新町、上町胡子町、辻北、栄町、粟井シーサイドハイツなど数多の屋台の製作実績のある松山市北条の有限会社 菅建設様に大工普請方をお願いし、足掛け4年の歳月と中西外区住民お一人お一人の浄財によりまして、先月末ようやく完成したばかりでございます。

ご覧のように風早だんじりの伝統的枠組みを踏襲しつつも、そこかしこに野心的に新たな挑戦や菅棟梁ならではのこだわりの創意工夫が施されておりまして、このたびの統一新調屋台の誕生が、名実共に夢と希望に溢れた中西外区のシンボルとして住民に百年先までも愛されてゆくものと確信しております。

入場してきました大屋台には中西外区 立花幹夫(みきお)区長をはじめ、屋台製作委員会を代表して前田勝 委員長、大工方 菅(ひろし)棟梁、彫金・彫刻師 上野俊之(うえのとしゆき)さん、漆塗り師 上田壽一(うえだとしかず)さんが乗り込み、

にぎにぎしく指揮を取っておられます。どうかみなさま万雷の拍手でお迎えください。

それでは、具体的にセールスポイントをご紹介してまいります。

本体の規格・概要

まず、屋台本体は総ヒノキ作りで、原木を4本、伊勢神宮お膝元の材木市場にまで出向いて買い付けを行いました。菅棟梁いわく、「木目も色も同じところで一括買い付けすることにより一体感のある風合いの屋台が製作できるとして、まず御用材にこだわった」とのことであります。かき棒の長さは18メートルに達し、その直径は太いところで 26㌢あります。これだけの大木の杉は松山市高縄山系には求められず、はるか久万高原町の久万山から昨年末に切り出してきたものです。

本体の規格は、正面横幅 2.5メートル(スラシ入れると2.624メートル)、側面縦幅2.85メートル(受け台車を入れると3.705メートル)、地面から笠木の天までが高さ4.4メートルあります。従来の屋台は正方形に近かったのですが、松尾の屋台は長方形になっています。ざっと3畳部屋の大きさあり、深紅の絨毯を引き詰めました。また中ほどには正方形に切り組みしたスペースが設けられ、ここから下に発電機を収納しています。

屋台の特徴:台車

この屋台の特徴としましては、岸和田など関西のだんじりの様式を取り入れて台車に本体を登載する形を、風早の屋台製作史上初めて採っている点です。ちなみに、この台車また本体の泥除け部分は総ケヤキ作りでございます。こうした台車を用いることにより、車高が低くなり人を巻き込むことも、タイヤで足をしゃぐ(伊予弁:踏みつける)こともありません。そうした安全対策上の配慮とともに外見も威風堂々とした物に引き立たせる効果が出せました。台車、前後正面には「端閂(はなかん)」と呼ばれるこれまた岸和田風のワッカが見えますでしょうか。ロープを掛けて引く時にも便利です。これも風早の屋台で初めての採用になります。

屋台の特徴:彫金・彫刻・本漆塗り

一方でこれからの屋台は、風早にあっても彫刻、彫金の時代になるとの思いは、屋台関係者ならどなたも、うなずかれるところではないでしょうか。したがって、これだけの側面の長さを活かそうと思ったときに、側面に4つ毎、正面に2つ毎で合計12個の空間が取れることに棟梁は着目しました。それで12支・(干支)の彫り物を思いつかれたのです。前・正面向って左から「ね、うし、とら、と‥順に巡り」最後の(いのしし)がまた前正面右に陣取っています。

十二支は通常生まれ年を当てはめますけど、他方で、12ヶ月の1年をも表す「時の単位」ですから、正月から大晦日までのときの移ろいの中で、また新たな歳を重ね新年を迎える、この無限のサイクルを表現したのは見事と言わざるを得ません。このことは風早宮大氏神の本日この後、行われる宮出しから宮入り・神輿(みこし)落としに至るご神体の「再生と復活」の神事ともオーバーラップするところであります。そういったまさに「物部の屋台」ならではの理念がこの干支の彫刻に施されています。

また別の観点から言えば、干支の彫刻は既に縁起開運の象徴として全国の名だたる神社仏閣に採用されています。例えば徳川家康公を祀る日光東照宮本殿には家康公の生まれ年にちなみ、寅の彫刻が、また二代将軍秀忠公ゆかりの同社唐門には、彼の生まれ年、うさぎの彫刻で飾られています。中西外区住民上げての悲願で成ったこの屋台には、当然特定の飾りを用いず、すべての住民の幸せと末長い中西外区の発展を祈念して、12支の彫刻を採用したものでございます。冒頭紹介しましたが、これら施工に当たったのは、讃岐豊浜ちょうさ太鼓台などの彫刻を多数手がけてこられた、まんのう町 上野彫刻所の上野俊之(うえのとしゆき)さんの手によるものです。飾り金具の彫金とあわせて今回ご奉仕いただきました。上野さんは香川県伝統工芸認定士でもあられます。

また黒と朱の上品な光沢を放つ本漆塗りを手がけてくださったのは高松市多賀町の株式会社 上田漆器(うえだしっき)工業所 代表の上田壽一(うえだとしかず)さんでございます。

本体上部:神座(かみくら)

皆さん、ひときわ鮮やかな高欄部分をご覧下さい。

従来の伝統的な擬宝殊高欄(ぎぼしこうらん)は前後正面に鳥居のように左右一対に立ててこれを残し、新たに4隅は愛媛県西条市の屋台風に蕨手刎高欄(わらびではねこうらん)を採用しました。これも風早の屋台では初めてのことです。

その上の四本棒、従来の規格では私ども子供の頃から「4本棒」と呼んでいましたけど、この1.8メートルの規模になるとまさしく「四本柱(しほんばしら)と呼ぶべきかも、わかりません。そこには燦然と輝く昇り竜を這わせ天を衝いています。

さらに四本柱の本体への差込口をご覧ください。これまでの屋台は全て「四角形」で施工されていましたが、畏くも天皇陛下が即位の大礼で玉座(ぎょくざ)となされた京都御所「高御座(たかみくら)」の形式を取り入れ「八角形」にして、その強度を高めると共に、この空間の神聖さをかもし出すことに意を用いています。

そしてそれを受ける、いわゆる笠木も重厚なつくりで、こうなると讃岐ちょうさ太鼓台のようにまさしく(雲板(くもいた)雲天井(くもてんじょう)と呼ぶにふさわしい代物(しろもの)となっています。

垂木(たるき)部分を広く取り、仰いで見るとお分かりのように群雲(むらくも)を彫刻していますね。四本柱の昇り竜が天を目指して、その行き着く先には高天原(たかまのはら)瑞雲(ずいうん)たなびき、稲光(いなびかり)と共に恵みの雨をもたらしてくれるよう、神への祈りが、そこに現れているようです。一連の物語が屋台に込められるといえるでしょう。

「もうこういったお祭りは日本で此処しかないんです」と亡き井上忠衡(ただひら)宮司に言わしめた、この風早火事祭りを、五穀豊穣で、今年もこうして相互に楽しみあっているわけなんです。

その他、笠木の周囲にも、唐草模様を掘り込み、4隅と側面センターには木鼻(きばな)として阿吽(あうん)狛犬(こまいぬ)が守護しているのも他の屋台に無い神社建築の技法を採用しています。

神輿より古い風早の屋台

私たちの先祖は古来より神輿(みこし)ができる奈良時代までは、この赤いお絹で囲われた神聖な空間に、そこそこの氏子町の神々を祀って、この風早宮大氏神のお宮出しに屋台を参集してきた歴史があります。当区の屋台には言わずと知れた京都・松尾大社から勧請した大神が大きな提灯に宿られて鎮座されているのです。だから随所に神使いの獅子を配置して邪気を祓い、神の空間としての威儀を高らしめるように(たくみ)たちの意匠(いしょう)が施されています。博多祇園山笠では古式を守り、毎年祭りに際して櫛田神社宮司が各山笠に御神入(おかみいれ)をする行事が行われています。これによって山笠は御神体にみなされます。この松尾の大・小屋台も去る10月4日に井上忠史・松尾神社宮司により御霊入(みたまいれ)の神事が厳かに執り行われたところです。

各飾り金具の意味

子供屋台の真鍮には従来の今治市大三島鎮座の大山祇神社「折敷に縮み三文字」の御紋に加えて、本社であります京都松尾大社の御神紋「葵」を幕板に彫刻しています。一方大屋台の雲板には風早宮大氏神のもう一つの御神紋の「右巴(みぎともえ)」の彫金が随所に施されています。

この巴の渦巻きが何を表しているかについては、水が流れる様子を表している説や雷の稲光をかたどったとする説、雲を表したものなど、蛇がとぐろを巻いているさまなど諸説ありますが、いずれにしても五穀豊穣に欠かせない恵みをもたらす水への祈りを込めています。

以上、簡単措辞ですが新調屋台の紹介に変えさせていただきます。どうか今一度、これだけの風早祭礼史を揺るがす大屋台をお作りになった中西外区・担き夫の皆さんに盛大な拍手をお願いします。


松尾氏子の皆さん、ほんとうに新調、お(・∀・)め(・∀・)で(・∀・)と(・∀・)う!ございました。