風早物部饒速日王国

物部氏之事

第一章

[第1章]風早國造神主講演録・遺稿集
未来を担う風早の若者たちへ - 君達には物部氏の血が流れているんだ! - 正しい秋祭りの継承を願って

7 風早の火事祭り

井上宮司

湖国(滋賀県)オコナイの飾り文化(神饌)「INAXギャラリー 巡回企画展より提供」

6番目の「風早の火事祭り」というのがあります。皆さんは火事祭(かじまつ)りというふうにおっしゃりますでしょ。鉦が鳴る太鼓が鳴る、鉦がジャンジャンジャンと鳴る、「あっ火事だ!」。だから火事祭りと。そういう連想をされるのは無理からぬことだと私は思います。しかしこの火事祭りは果たしてそうなんだろうかということを考えるわけです。

火事祭りの「火」というのは何だろうかということでありまして、この「火」とは一番最初の國津比古命神社のところに神様の名前が書いてあります。「天照国照彦天火明櫛玉饒速日命」と書いてある。「天火明(あめのほあかり)」とあります。その「火」は何かといいますと、このヒであります。(あめ)は敬称の言葉です。火明とは何か。ホは稲の穂であります。アカリは穂が非常に熟れていることです。立派な稲が熟れていることを表す言葉です。それと同時に、アメノホアカリ、神様の火であります。

老杉の神饌は品目が多彩で端正なばかりでなく、和紙の帯で華やかに結ぶなど、見た目にも極めて美しい。写真は「二の膳」と呼ばれるもの。なかにはカマス、大根、めすし、雀、束牛蒡、束大根、銀葉などが配膳されている。(「INAXギャラリー 巡回企画展」より提供)

滋賀県の草津市(下笠町1196)というところに、老杉(おいすぎ)神社というところがある。ここにはオコナイの神事というのがある。それからまた四国でしたら、徳島県の撫養町(むやちょう)、今は鳴門市になっている、宇佐八幡神社(鳴門市撫養町黒崎)というのがある。ここはイタダキの神事というのがあるんです。また出雲大社にはオシママイリの神事というのがあるんです。これは何をするのかといいますと、オコナイの神事、イタダキの神事、オシママイリの神事にいたしましても、その年に穫れたお米を使って、一番最初に火をおこすんです。その清らかな火で、一番最初に穫れたお米を炊くわけです。そしてそのお米を神様に差し上げる。その残りをば()こし()す(饗応・宴を主催する)。神様がお上がりになった残りのご飯を私たちがいただきましょう。「神事は聞こし食すことなり。」というふうに言っている。そして神様のご神徳をいただくわけです。そして神様と同体になる。これがオコナイの神事であり、イタダキの神事であり、オシママイリの神事である。

こういうことを日本人はやってきました。今でもやっています。ここでも三献のお酒を差し上げることもそうでしょうし、あるいはまた、これまた後からお話ししますが、火事祭りというのは字に代えたら火事祭りですが、アメノホアカリノミコト様に差し上げる火を、私もあなたも、あなたもみんな、一人ひとりが神様に火を差し上げるんです。神様に火を差し上げて、おひかりをいただく。そのおひかりをいただく神様に火を差し上げ、そのおひかりの火をいただく。このお祭りが火事祭りという。ですから字は火事祭りですが、これは「火の事の祭り」であります。半鐘が鳴るから火事だ、だから火事祭りとお考えになるかもわかりませんが、少なくとも皆さん方はこの神様に差し上げる火、おひかりなんだ、そのおひかりを差し上げる。それを私たちがお祀りをし、子どもや孫にそれを継いでいくわけです。(火継ぎの祭り)

老杉神社の鳥居と後方に見える三上山

老杉神社本殿